ロードバイク乗りというのはおかしな生き物で、自転車にまたがって走り出してから「どこへ行こうか」と考えます。元来“どこかへ行くための乗り物”がロードなのに、目的地は二の次で、“乗ること自体”が目的となるわけです。「手段が目的となる事を“趣味”と言う」ならば、趣味のロードとしては正しい姿と言えるかもしれません。
こんな時の目的地は、最高に意味不明でどうでもいい場所にしましょう。どうしても行きたい場所は、もっと気合をいれて、ちゃんと行きます。暇を持て余してロードを転がしているのだから、こんな時でなければ絶対に行かないような場所がいい。脳みその片隅の裏路地のマンホールの底に落っこちていたような、そんな目的地こそふさわしいのです。
話は変わりますが、トンネルとか電車の高架橋、高架下(ガード下)が好きです。薄暗い人生を歩んできたので、太陽の光が降り注ぐ屋外では目をあけていられません。人の目が届かない薄暗く、ジメッとした高架下で、息を潜めていたい。ああそうだ、変なガード下に行こう。“ガード下ライド”だ。最高に無意味でゾクゾクする。
こんな低いガード下と一緒にロードバイクを撮影したら面白そうと思いましたが、なんとこのガード下、新駅の「JR高輪ゲートウェイ駅」誕生と共に消滅するんだとかもう家帰ろうぜ。
現存していて、もっと面白い高架橋はないものか……。
神社の境内で休憩させてもらいつつ、スマホをポチポチしていると、東急池上線 長原駅-洗足池駅のあいだには、さらに低い1.3~1.4mという低さの高架橋があるらしい。もはやリンボーダンスの世界です。だが世の中広いもので、さらに検索を進めると、1mを切る都内で一番低いかもしれない高架橋が存在するらしい。まじかよ背骨折れるじゃん。
じゃあ何のために作ったんだ
もしかしたら農業用用水路の跡とか、暗渠の名残とかなのかもしれません。なんによせ、向こう側を撮影しようとしゃがんで体を入れてみますが、ヘルメットが天井にゴチゴチ当たります。しゃがんだまま進めないほど低いのです。
かがんでいると、ゴーッという音が近づいてきます。ちょうど電車が来たようです。
こっwww
こえええええええwwwwwww
あまりに電車が近すぎて、高架橋の近くにいると、上半身が吹き飛ばされそうな恐怖。なんだこの無駄なアトラクション感。
とりあえず、どのくらい低いかを実感していただくための動画を撮影しました。暇な人は再生してください。
感想:すげぇ低かった
ああ素晴らしいこの無意味さ。しかし、Garminに表示された消費カロリーだけを見て帰路につくのとは明らかに違う、不思議な満足感があります。私は都内で一番低いかもしれない高架橋をくぐろうとした事のある人間で、旅に出る前の私とはもう違う人間なのです。意味はよくわかりません。
特に考えずにロードにまたがり、なんとなく尾根幹の方に向かったけど、心にポッカリ穴があいた気分の時はガード下の事を思い出してください。ヘルメットはかぶったままの方がいいです。